サカナ記念日

2015年6月17日

こんにちは。意外と気を使うアラキングです!

最近、サラダ記念日で有名な最近石垣島に移住された俵万智さんの本を偶然読んで
余計な力を入れないナチュラルな文章に感銘を受けました。

アラキングの過去のブログを読み返すと・・・・・

なんと、余計な力の入れ具合・・・・ガチガチすぎて拒否反応を示す方がいることでしょう・・・・

というわけで、今回は俵さんのような文章を目指すつもりですので
よろしくお願いいたします。


 朝起きると、うわうわうわと声を出しそうになるほどの晴天。
本来なら、八重山の
梅雨時期は夏至南風(かーちばい)と
呼ばれる風が10日くらいうわっと吹いてそこで海人の祭典
ハーリーがあって、梅雨が明け本格的な夏が始まる。

しかしこの日は無風。しかも奥さんと子供は宮古島に出張バレーボールで不在。

「これはキューっと行くしかないでしょう!」

と友人2名を誘い、船釣りへと出発することにした。

船長は僕。

しかし操船は久しぶりだ。
ブルルン!とエンジンをかけるとそれが
合図のように、昔自分の小舟を操船し、妻とデートしていたことを思い出した。

岸から船を離し、海に誘われるように船を出す。

この一瞬がたまらなく好きだ。

これから起こる遊びへの期待はもちろんのこと、
船が起こす風が身体にまとわりつくと遠方の島と自分が一つになる感覚がするからだ。

「今日はアラキングさんのポイント選びにかかってますよ」

と友人からのプレッシャー。

そうか、僕が風と潮位を読み、釣り人を
楽しませなくてはならないのだな、とその時に
自覚した。

しかし僕はどこに行けば魚が釣れるのか
まったくわからない。

適当なポイントをみつけ、
何度も魚型のルアーを海に放り込み、糸を巻いてみるが
魚型のルアーしか糸にはくっついてこない。

しかし皆笑顔で楽しそうだ。
それは目の前のいや、目の下の海のコバルトブルーの素晴らしさにイライラが溶けてしまうからでは
ないか。

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ここ泳いでみよーよ。と友人を誘い海へとダイブ。

しかし「魚が釣れないので気晴らしに」という前提は内緒だ

僕の泳ぎの目的は「タコ」
泳ぎながら「タコ、タコ」と呟いていた。

こちらではタコがサンゴの間などで寝ていたりするのだ。

しかし、タコはいない。

泳ぎながらまた釣りして、、、を繰り返していた。

しかし皆、気づいていると思うが未だに
釣果は0である。

出航して2時間半がたった。。。。。0である。

ジリジリ太陽に照らされ2時間半・・・・0である。

内心焦りが生じているが、悟られないように必死だ。

ふと空を見上げる。

空には雲一つ無い。

ふと友人の顔を覗き込む。

なんと雲がかげっているではないか。


「今日はお魚さん休日なんだね。」


なんていう船長の気の利いた小ボケ
友人2人の顔を晴らすことは出来ないのである。

ポイントを10回は変更したであろうか

その時、僕の竿にとうとう、魚の当りが!
グイグイ!っと糸を引っ張り、竿がしなる。
ひゃっほー!
釣り上げるとクチナギというフエダイ科の一種だった!!!!

うーん、嬉しい。そしておいしそうだ。

初めて釣った魚に皆が狂喜乱舞している。
次は自分が!と夢見たのだ。興奮に混じり安堵感が船中に広がった。

皆の目が異様に生き返る。

そして!また当りが!釣れた!やった!しかし釣ったのは僕である。
今度はさっきと微妙に空気が変わっている。
人の幸せは憎むべきものなのだと人間には元々プログラミングされているのが
わかる。

その本能に簡単に支配され
えーーーーっと不満を遠慮なく吐露する友人達。


そして!また当りが!釣れた!やったしかし釣ったのは僕である!!!!

場を盛り上げようと大袈裟に喜んで見るが
うわ!っと驚くことが起きていた。

友人二人の合計4つの目が全て冷たい。

「次は友達に釣れてくれ・・・頼む神様・・・・
というか俺にはもう釣れないでくれ・・・・」

これでは「魚釣り」ではなく「魚釣れるな」である。
果たしてそんな、スポーツは流行るのであろうか。

「やったぜ!三日連続、魚を釣らない方法!伝授!」
なんて釣り雑誌の特集があっても誰も読まないであろう。

しかし世の中は無常な瞬間があり、不幸は幸せと違い
蓄積されたものではなく、突然目の前に訪れるものだ。

なんとあれほど願ったのに逆奇跡が起こり


まさかの1投目で当たりがあり、無事に釣れてしまうという・・・・・・


もう友人達の顔を見ることが出来ない。

しかし全くの不幸である。
やはり、幸福は分かち合ってこそ、なのである。

そこから友人を釣らすために全力を出すことになる。


風を読み、神経を尖らせる。
ひゅうひゅう、風が南風だ
そして潮位は100位はあるはずだからあそこにはいけるな。。。
などとブツブツ呟きながら船を走らす。

ポイントを定め、リーフの際に船を風まかせに流す。
これが難しい。

しかしここで帰る訳には絶対にいかないのだ。
太陽が暑い・・・というより痛い・・・・・

もう駄目か。と何度かため息をつく。


・・・・・・・しばらくすると
友人の竿に当りが!!

ぐいーーーーんっと竿がしなる!
大物だ!!!!!

友人が格闘している横で
頑張れ!頼む!負けるな!頼む!

妊婦の側にいる旦那のような気持ちになる。

思わず
「ひーー!ひーー!!ふーーー!!」

と言っていたかもしれない。

手に汗を握り、海面に注目する。
白い物体がゆらゆらゆらゆら・・・・・

絶対に魚だ!!!!

友人が背骨をしならせ竿を立てると
「すぽーーーーん」と音がするように
魚が船上に舞い込んできた。

ビチャビチャビチャ!と元気よく船上を跳ねる。

「ようこそ船上へ。君をずーっと俺たちは待っていたんだ。
来てくれて嬉しいよ。本当に嬉しい。ありがとう。」

と一通り紳士のように賛辞の声を述べた3秒後には
「どんな風にして食べよう」と煩悩に支配される。

友人の顔は、八重山の太陽を鏡で写した様に輝いていた。
あはは、と僕が笑い、あははは、と友人が返す。

タコは獲れなかったけど釣果はあったので
小浜港に引き返すことにした。

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南風が気持ち良い。

しかし、長い戦いだったな。船に結局6時間も乗っていたんだな。

クタクタに疲弊した身体でバイクにまたがり帰路についた。
家に着き、ふと、鏡に映った自分の顔をみる。

「あっ」と声をあげそうになる。

顔が信じられないくらい日に焼けて真っ赤で
まるで「タコ」みたいだった。



「タコ、みーーっけった」

ふふふ、と自嘲的に笑い、浴びた水シャワーは
火照る体を冷まし、最高の気分をくれたのだった。


PS 書いている内に俵万智さんのことはすっかり忘れてしまってました・・・・
  やはり僕はガチガチのブログしか書けないようです・・・・・・・