ぬけがらの 君うつせみの うつつなや

2022年5月2日

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はいむるぶしの庭園内や島内のサトウキビ畑を歩くと抑揚のない単調な虫の声が響いている。
お世辞にも風情のある鳴き声ではない。


鳴き声の主を探すと草や木の葉の上に意外と簡単に見つけることができる。


大きな鳴き声からは想像がつかないほど小さな虫・・・セミである。
セミと言えば夏の風物詩であるが、八重山諸島の島々では種類を変えながら4月から12月まで鳴き続けている。


先の鳴き声は4月から鳴き始めるイワサキクサゼミ。
日本最小のセミで体長は15ミリ程度しかない。
鳴いていなければほぼ蠅である・・・


クサゼミは草蝉で、樹木ではなく草本から吸汁するためその名前になったらしい。
イワサキはこのセミの発見者、岩崎卓爾氏を讃えて献名された。
岩崎氏は1899年に中央気象台石垣島測候所の台長に就任、気象台での業務、研究とともに、八重山諸島の生物や風習などの研究で知られている。

岩崎氏が収集した昆虫標本を送った先のひとりに名和靖氏という昆虫学者がいるが、この方がはいむるぶし内にも分館を構える名和昆虫博物館(大正8年開館・現存する日本最古の昆虫博物館)の祖である。

ぬけがらの 君うつせみの うつつなや


うつせみは空蝉で蝉の抜け殻のこと。
蝉の抜け殻を見てこの世のはかなさを詠んだ子規の句である。


この地に来てもう何度目の夏を迎えるだろうか・・・
なぜか未だにイワサキクサゼミの空蝉にお目にかかったことがない。
今年こそ見つけ出して世をはかなむことができるか。

いや、シーズン真っ盛りを迎える小浜島、ずっと眺めていられる珊瑚礁の海のきらめきや立ち上る入道雲の力強さに心奪われる季節。世をはかなんでいる時間は今年もなさそうである。


イワサキクサゼミの出現期は4月から7月ごろまで。
皆さまも八重山諸島にご滞在の折には探されてみては。
(足元のヘビや害虫にはくれぐれもお気をつけください。)


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